5. 秩序あるクォーク・レプトンの世界

本当の素粒子の世界は複雑なものではないはずです。実際、物質の素粒子と考えられているクォーク族とレプトン族は、複合粒子である兆候はまったくなく、しかも非常に簡単に整理されています。この高度な秩序(対称性)は、その背後にもっと基本的な物理法則があることを、私達に教えようとしています。


クォークとは?

1960年代、数百種類にも上るハドロンを分類するよ い方法が提案されました。陽子、中性子などバリオン 族はクォークと呼ばれる小さな素粒子3個、また、パ イ中間子など中間子族は一対のクォークと反クォーク からできていると考えるアイデアでした。

当時、3種類のクォークがあると考えられました。 たった3つの、しかも『半端な』電荷を持つクォーク で、数百のハドロンを分類し、その性質を予測できる ことは、革命的な進展でした。3つのクォークはアップ、 ダウン、ストレンジと名付けられました。電子がその 電荷を通じて電磁気力を感じるように、クォークは『赤、 青、緑』の3つのカラー荷を通じて強い力を感じます。

このクォークモデルの提唱以来、今日まで、地球上 の物質や宇宙線の中などで数多くのクォーク探索が行 われましたが、裸のクォーク(半端な電荷の粒子)は 観測されませんでした。これは強い力の持つ特異な性 質によるためと考えられています。

クォークは、高エネルギーのレプトンで陽子を激し く叩く(非弾性散乱)実験で分かったように、陽子の 中に点状粒子として確かに存在するのです。











クォーク、レプトンの対称性:ともに電荷が1単位(e)だけ 違う2つの素粒子から成る3つの世代があります。世代内の 2つの素粒子は弱い力で互いに転換し合うことができます。 これら3つの世代は質量以外同一の性質を持ちます。一般に、 世代が進むにしたがって質量が大きくなり、その生成に高い エネルギーを必要とします。どうして3世代が存在し、また、 クォークとレプトンにどのような関係があるのかは、素粒子 物理の大きなテーマの一つになっています。

3世代のクォーク、レプトン

1970年代になると、電子・陽電子コライダーによる 高エネルギー実験が精力的に行われるようになりまし た。これらのコライダーでは電子と陽電子が消滅し、 クォークと反クォークが対生成されることが観測され ました。

確かに、低いエネルギーでは、カラー荷を持ち半端 な電荷を持つアップ、ダウン、ストレンジの3種類の クォークが対生成されていました。電子・陽電子の衝 突エネルギーを高くしていくと、さらに、2種類のク ォークが次々と発見されました。第4番目のクォーク はチャーム、第5番目はボトムと名付けられました。 チャーム発見とほぼ同時期に、電子、ミューオンに続 く電荷を持つ第3番目のレプトンも発見され、タウと 名付けられました。

5つのクォークの内、アップとチャームは電子電荷(- e)の3分の2の正電荷(2/3e)を持ち、残りのダウン、 ストレンジ、ボトムクォークは電子電荷の3分の1の負 電荷(-1/3e)を持っていることも確かめられました。

さらに仲間分けをしてみると、6つのクォークが3 つの対(2/3e電荷,-1/3e電荷)を形成することが強く示 唆されました。このような6クォークモデルはチャー ムクォーク発見の前年、1973年、小林、益川によって 提唱されていました。ボトムクォークと対をなすと期 待されていた第6番目のトップクォークは、予想通りに、 1995年、陽子・反陽子コライダーで発見されました。

また、レプトンも電荷を持たない3つのニュートリ ノを加えた6種類あり、クォークと同様に3世代を形成 しています。これら世代は質量以外同じ性質をもって おり、どうして3つの世代を必要とするのか、また、 このようなクォーク・レプトンの対称性はどのような 法則に基づくのかなど謎に包まれています。




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